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第八十話

「さあて。どう攻略するかな」

そう小さな皇帝は眉の上で指を叩く。

一度椅子の上で足を組もうともしたがそれはまだ無理のようだった。


「おっと安心しろよ。お前のことじゃないからな」


そう彼は陽気に私の肩を叩く。

子供のくせに出来るもんならやってみろと思ったがそんな気持ちをしまって造り笑いを浮かべる。


だって私は大人だから。

「商業都市ベリューブックのことだ」

彼は今度は真剣な眼差しで言った。


私は思わず唾を飲んでしまった。

ジャンやクルスさんアマリアさん。みんながいる街。

「教国を倒すには避けて通れない都市だからな」


そう長髪の軍師が言った。

「ああもう。一度陥落させたのになに奪還されてんだよウィルー。三軍団から攻められやがってー」


そう皇帝が子供みたいな口調で言うと長髪の軍師は不愉快そうな顔をした。

「お前が竜を使えばもっと話は簡単なんだよ。それを訳のわからん理由で戦争に使用しないで。それに三方を攻めれたってことは三方からも攻められんだよ」


そう二人は昔からの知り合いみたいな様子で話す。

幼馴染みか何かなのかな。

私が見ているとウィルと呼ばれた長髪の軍師は急に冷静になる。


「敵がここまで迅速に反撃に出てこれるとはな。おかげで重要拠点に兵力を集中させるのが間に合わなかった。魔法使いという戦力をまるで勘定に入れなかった俺の落ち度と言えば落ち度かもな」


皇帝は神妙な顔で彼の肩に手を置く。

「お前のせいじゃない、って言って欲しいんだろウィルー?」

そう皇帝が笑いを堪える様に言うと軍師はこのやろうと握り拳を震わせていた。


「まっ仕方がないさ。あいつらは秘密を隠すのが上手だからな」

そう皇帝がはっきりとした声で言った。


「確かにな。解せんことばかりだ。なぜウェルトミッドではこれ程の戦果を上げられる魔法使いを動員しなかったのか。なぜ亡国の危機に瀕して初めて投入してきたのか」


「ホントは使いたくなかったってことだろ」

そう皇帝が簡単に言った。

私は何故かその言葉に反応してしまった。


確かにそうだ。

国が亡びそうになったら偶然すごい魔法式が発見された。

そんなのありえるのか。


あの魔法式はずっと昔からあったんじゃないか。

だとしたら何で隠してた? それに誰が作ったんだ?

教会の秘密……。いつかの血塗れの男を思い出した。


私が唇に手を添えて考えていると皇帝は私の肩を叩いた。

「そういえばすまなかったな」

「えっ? 何がですか?」


私は皇帝に訊ねてみる。

「玉座の近くにばかりお前を置いて。難しい話ばかりしてしまった」

彼は前方を掌で示す。


眼をちょっと動かしただけでも飛び込んでくる煌びやかな世界。

「今日はお前の歓迎式だったな。楽しめよ」

そう彼が掌で示した先を見ると夜の闇に浮かぶ城で貴族たちが月夜の舞踏会を楽しんでいた。

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