第六十四話
「おやおや大丈夫かね」
そうローブを着た白髪の男がアマリアさんに手を差し伸べる。
「えへへ。大丈夫ですよぉ」
その老人はゆっくりと彼女を立ち上がらせる。
「君たちも魔法使いかね」
そう深い皺を刻んだ老人が訪ねる。
私は頷く。アマリアさんも彼に寄り掛かって何度も首を縦に振る。
「なるほどどちらかが『雷神』か。私の眼は節穴では無い。……いくら酒に酔っても自己を失わない泰然自若としている君だな」
そう鋭い眼で彼は私を見据えたが私はそっちですと酔いどれて白い頬を赤く染めた魔法使いを指差す。
「……なるほどこっちか」
彼は間違えてもそんな事は無かったかの様に話を続ける。
「魔法使いが戦場に駆り出されるなんぞ嘆かわしい話だ」
「貴方も魔法使いなんですか」
「いかにも」
そう古いローブに身を包んだ老人が口を開く。
「私はクラーク・ガーフィールドだ」
「クラーク・ガーフィールド!」
私は興奮して握手を求めた。
「魔法学院恩賜賞受賞者で最高の魔法使いの一人と名高いお方ですね! 西部の田舎魔法都市の私でも知ってます」
「今では君らの方が有名人だがね。どうもあの魔法式は私に合わんのだ」
そう彼は忌々しそうに首を傾げる。
「君はあの魔法式の秘密を知っているのかね?」
「秘密?」
「……いや知らないなら良いんだ」
そう彼は眉をひそめ銀色の長い髭を撫でおろす。




