第六十二話
新品のローブが支給された。
黒く艶めいてる。袖口には金色の刺繍までしてある。
普段なら泣いて喜ぶんだけど今日は違う。
パーティというこの状況が私を憂鬱にさせるんだ。
「帝国なんてすぐ帝都まで追い返してやるぜっ!」
そう若手の将校たちが動きを合わせて右手を高く突き上げる。
「おーっ!」
その熱気についていけないかった。
私は独り部屋の隅に背を預け葡萄酒を飲む。
「壁の花になっちゃだめだぜ」
「そうですよ」
そう正装したクルスさんとアマリアさんが挨拶に来た。
「あっ御怪我は大丈夫ですか?」
思い出させる様で悪い気もしたがそうクルスさんに聞いてみる。
「心配してくれるんだ。カーシャちゃん可愛いなあ。チューしちゃおっかなあ」
もう何処にでもいる変態親父と化していた。
アマリアさんが彼の顔をどける様に頬を掌で押す。
「将軍達に呼ばれてるんですよね。行ってきたらどうですか?」
「ええ? 嫌だよ。むさい親父たちの話なんか」
彼女が彼を睨むとクルスさんはたじろぐ。
「うぉっほん。まあ行ってこようかな。楽しみは後に取っておくか。爺さんは流石の俺でもお持ち帰りできないからな」
そう彼は口笛を吹きながらうそぶいた調子で歩いていった。
「あれでも落ち込んでるんですよ」
「ええわかってます」
そう私は頷く。
「こうして二人で話すのって久しぶりですね」
そうアマリアさんは微笑んだ。
ドレス姿の彼女にはとても魔法使いの陰なんて感じられなかった。




