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第六話
講義が終わったので魔法書をローブに入れる。
私の持ち物で一番高価なもの。
盗まれない様にローブの内側にしまう。
「なあカーシャ。魚鍋でも食いにいかないか」
そう男の子に声をかけられた。
「いいよ今日は」
他の男の子たちが笑ってる。
「二十連敗だな」
「うるせー」
彼はそれでも私の前の席に座り動こうとしない。
「そうだ街の噂聞いたか?」
私は首を横に振った。彼は唾を飛ばしながら話す。
「戦争が始まったんだよ。イヴォーク帝国とオレオール教国で」
「物騒だね」
彼は慌てた様に付け加える。
「他人事じゃないよカーシャ。この街つまり魔法都市ソルセルリーはオレオールの庇護下なんだから」
他の学生が茶化す様に口を挟む。
「女を口説くために政治を勉強するのはやめろよな」
「うるさいよ」
彼は野次を無視するようにまた私の方を見る。
「俺たちだって何が起きるかわかんないんだよ」
そう真剣な顔で言われても実感はわかなかった。