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第五十七話
「2人がかりってわけね。おいでよ慣れてるからさ」
そう彼女は白い指を揃えて挑発する様に動かす。
「全く大した魔法使いだよ。下手したらアミィと同じくらいかもな」
クルスさんはそうジャンの隣に立つ。
「お嬢ちゃん。名前は?」
「……リリィ・スペイセク」
そう彼女が微笑むとその笑顔の横に氷の刃が出来た。
彼女が白い指を鳴らすとその刃も飛ぶ。
クルスさんはそれを難なく剣で破壊する。
細かな氷の粉が舞う。
「リリィ。お前の灰騎士は?」
彼女は微笑みながら教壇の隅を指差す。
「神父さんと一緒に殺しちゃった」
あははと彼女は高い声で笑う。
「だって。だってさもう止めて欲しかったんだもん」
そう彼女は両耳を塞ぐ様に手を当てる。
「やっと戦争で生き残ったと思ったのに……。あの辛い日々を乗り越えたと思ったのに」
彼女は髪をかきむしる。
「何で今度は神父さんの相手までしなきゃいけないの」
そう片耳を抑えながら彼女は残った掌を前に出す。青い光がまた集まっている。
「助けてくれるんじゃなかったの?」
彼女の頬には線みたいな涙が流れていた。




