第五十六話
「俺が行くか」
そうジャンが剣を抜き私達に長椅子の後ろに隠れてる様に指示を出す。
「凍傷になってるか?」
そうクルスさんに訊く。
彼は首を横に振った。さっき受けた氷の風のことを心配してるんだろう。
「良かった。時間を稼ぐから動けるようになったら来い。お前が必要だ」
そう彼は強く地面を蹴って魔法使いの元へ向かう。
「さて。どうやって倒したもんかねえ」
「あっ」
私は長椅子に隠れながら名案を思いついた様に手を合わせる。
「うちにはアマリアさんがいるじゃないですかっ!」
そう彼女を見る。
「『雷神』でしたっけ」
「駄目だ。アミィの力は強すぎて逆に使えない」
そう彼ははっきり言った。
「うぅ。すみません」
そう彼女が申し訳なさそうな顔で言う。
「アミィの力は戦場みたいに広い場所なら使えるがこんな狭い場所だと真価を発揮できないんだ」
彼は淡々と説明する。
「何せ巨大な雷を出すわけだからなあ。こんな所で使ったら敵も殺せるが俺達も真っ黒焦げになっちまうよ。力を抑えて戦わせてもいいが教会が壊れて下敷きになるからどっちにしろ一緒だな」
なるほどと私も頷く。
彼ははっと思いついた様に口を開いた。
「教会なんか入らないでいきなりアミィの一発をぶっぱなせば良かったてことか」
アマリアさんが抗議する。
「兵隊さん達がいたじゃないですか」
「冗談だよ怒った顔も可愛いなあ。もう」
そんな彼とアマリアさんとのやりとりを横目にジャンを見る。
頑張ってたのに誰にも見られてなくてちょっと可哀想だなと思った。
「……アミィにやらせたら絶対殺しちまうからなあ」
彼は長椅子の後ろから向こうに眼をやる。
「できれば殺したく無いんだよ」
そう言って彼は青い髪の魔法使いを見た。




