第五十四話
「ちっついてねえ。好みの顔だぜ」
「クルスさん誰にでも言いますよね。それ」
そうアマリアさんと二人で夫婦漫才みたいのが始まったが無視する。
「ジャン。魔法使いってことは味方ってこと?」
でも味方の兵を殺している。周りに証拠が転がっていた。
「理由はわからんが敵になったようだな。捕縛するか殺すか」
こんな小さな女の子を?
そう思ったがそんな日常の発想じゃ駄目なんだってことがすぐ解ってしまう。
自分を良くみせるための正義を口にしても言葉の無駄なんだ。
悲しいけど戦うってそういうことなんだ
だけどそんな考え方になってしまう自分も嫌になる。
こうして私優しさを無くしていってしまうのかな。
瞬間、氷の破片が私の顔の前で散らばった。
赤い髪がなびいている。その右手には抜身の剣があった。
氷の塊が床に落ちる。
「大丈夫か」
そう私の前にクルスさんが立つ。
全然動きが見えなかった。
「俺の前じゃ美人は殺させないぜ」
そうカラティーヌ像に乗った青い髪の少女に剣を向ける。
「熱いね」
そう彼女が笑うと口の端から白い息がもれた。
「女好きなの?」
「人聞きの悪い事を言うんじゃねえよ。崇拝してるんだ。お前ももうちょっと大人になったら美人に含んでやるから、おいたは止めてとっとと降りてこい」
彼女はその言葉に応えたのか地面に降りた。
すると着地した周りに霜が広がっていく。
「そんなに好きだったら一日に十人ぐらい寝れる?」
彼はちょっと考える顔をした。しかしすぐ戦闘中だと思い出したのか真顔になった。
「何言ってんだお前」
「男じゃ出来ないよね」
そう彼女は冷たい眼で笑う。
「私は出来るよ女だから。一日に十人でも。そんな毎日を繰り返してきたの」
その少女の哀しい笑顔を見て彼の剣が止まった。
「クルス止まるなっ!」
そうジャンの叫ぶ声が教会に響いた。




