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第五十二話
「ん? なんだ?」
そうクルスさんが掌を前に出し降ってきたものをとらえる。
「雪の結晶?」
そう彼は皮手袋にのったものを不思議そうに見る。
「……まだ秋のはじめだよな?」
さっきまでの話を打ち切るぐらいの特殊な現象に私達も沈黙する。
坂の下から悲鳴が聞こえた。
私たちは一斉に振り向く。
「何かあったみたいだな」
そうジャンが呟く。
我々は四人で先程の坂を下る。
街壁に大量の血液が飛び散っていた。
道の先には兵士たちの死体が転がっている。いずれも地面から生えた氷柱で身体のあちこちを貫かれていた。
クルスさんが膝をつきその血に触れる。
「まだ暖かっ……冷たっ!」
そうびっくりした様に手を振る。
何してるんだろうと思う。
「外傷から見てさっき死んだのは間違いなさそうだが。異常だぜ。こりゃ」
そう死体から流れる血の河をたどっていくと教会にたどり着いた。
先程見たものと違ってずいぶん凍えた建物に見えた。




