52/242
第五十一話
「ぶぇっくし!」
そうアマリアさんがくしゃみをした。
「あっすみませんどなたかハンカチ持ってませんか?」
そう辛そうに眼を細めて宙に手を漂わす。
「麺って食べづらいんですね。鼻の変な所に入って痛いです」
良い意味でこの緊迫した空気を壊してくれた。
天然なのかなアマリアさんは。
「そんな箸の持ち方をするからだぞアミィ」
そうクルスさんは心配そうな顔でハンカチを取り出す。
「すびません」
そう彼女は鼻をかむ。
「はあ。気が抜けちまったよ」
クルスさんはそう明るい顔で笑う。
私もこの勢いに乗って場を和ませようとした。
「あ。そうだ黒騎士の試験って難しいんですよね。向上心あるって良いと思うよジャン。立派だなあ。あははは」
また場の空気が重くなった。あれ? 何で?
「……噂があってね」
そうクルスさんが口を開く。
「黒騎士の試験に失敗した灰騎士は死ぬんだよ」
そうジャンが後を続けた。
私の瞳が震える。そんなのは絶対嫌だと思った。




