第四十八話
白い透き通った湯の中にひっそりと漂う麺。
香ばしい匂いを含む湯気。
刻まれた野菜の下に隠れる白身魚。
「うーん。ルンプーって美味しいね!」
麺を啜り頬に手をやる。お口の中が幸せだ。
「まったく。お前は。食い意地ばかりはって」
隣ではふはふ食べてるジャンに言われたくなかった。
「売り切れですかぁ」
屋台の方から残念そうな声が聞える。
ごめんなお嬢ちゃんと店の主人が言う。
「今茹でてるやつが二つあるだろう」
そう赤毛の騎士が言う。
「それはそこのお客様のもので……」
そう主人が申し訳なさそうに私達がいる机を掌で示す。
赤毛の騎士はこちらに目をやる。
「もう食ってるぞ」
「……へえ。しかし」
そう主人は頭を掻く。
「お前、注文したのか?」
「うん。したよ」
ジャンが小声で聞くので私はあっさり答える。
「お前。普通こんなの後二つも食えんだろ」
「違うよ。ちゃんとジャンの分も頼んだから後一つだよ」
「あ。良いですよー。ちょっとこっちの手違いだったみたいですー」
そうジャンは口の横に手を添え大きな声で騎士に食べるよう勧める。
「おっすまないね。何て良い人達なんだ。ほらお前も礼を言え」
「すみません。何か催促したみたいで」
そうその女の人が赤毛の騎士の後ろから現れ頭を下げた。
黄金色の髪が揺れる。
「あっ」
そうお互い顔を見合わせ言ってしまった。