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第四十七話
「皇帝が竜との契約に成功したと?」
「あくまで噂ですが……」
神父は教会の入り口でそうジャンに答える。
「しかし竜は争いを好まないはず。いったいなぜ?」
「そこが謎なんです。もし事実だとしたら約三百年振りの竜使いです」
ジャンがその言葉を聞いて静かに口を開いた。
「……イヴォークの初代皇帝以来ということですか?」
神父は頷く。
「竜と心を通わせた唯一の人物で広大な領土の獲得者。……願わくば再来になって欲しくないものですね」
ジャンも頷く。
「しかし、だとしたら合点が行く所も多い。イベニアが侵攻しなかった理由も頷ける」
神父も同意する。
「イベニアと帝国では竜は信仰の対象ですからね。それに争ってるとはいえもともとは血の繋がった王家同士。結束しても不思議ではない」
神父はゆっくりとした声で述べる。
「あの野心溢れるイベニアの王ですから別な狙いもありそうですがね」
私は黙って話を聞きながら難しい話つまんないとふてくされる。
なんだかお腹も減った。
お昼だからか街には料理屋から流れる良い香りが広がっていた。