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第四十話

あれ。なんで私倒れてるんだ?

頬が地面に着いてる。舞う土埃。動くたくさんの足。

耳が聞こえないや。振動だけが身体に伝わる。


灰色の影がもの凄い速さで動いてる。

うわ汚いなあ。その影が動く度赤い液体が飛び散ってくる。

私の眼の前にもその赤い滴が落ちた。


宝石みたいに綺麗な液体。指で触れようと手を伸ばす。

ああこれは血だ。

そして獣みたいに動く灰色の影はジャンだ。


なんだっけ予想より敵が多いんだっけ?

弓を撃ち終わって乱戦になった所まで覚えてる。

身体を起こそうとする。するとぬるっとした液体で手が滑りまた身体を倒す。


顔にそれが着く。なんだこの白い液体?

すると急に吐き気がこみ上げてきた。

白い吐瀉物が地面に広がる。手で押さえても遅かった。


ああ。これ私が出したやつなんだ。

そうよろよろと足を震わせて身体を起こす。

ジャンがこっちを見て怒った顔で口を動かしてる。


いつかみたいに朦朧してるの。だから言ってることわかんないよ。

ああそうか伏せてろって言ってるのか。

彼はまた向こうに視線を戻し自分よりはるかに多い敵に蹴りを入れる様にして突っ込んでいく。


凄いなあジャンは。強かったんだなあ。彼の周りにいる人から倒れていくみたいだ。だけど多勢に無勢だよ。私に注意を払ってるから尚更だ。

周りをみると教国の赤い服を着た兵隊たちがいっぱい倒れてる。


死んでるかどうかはわからない。


この人は絵描きになりたいって言ってたっけ。

このおじさんは今度の休暇は娘に会うって。

すごい呆気なくこの人達の夢や未来が消えちゃった。


私、本当は楽観視してたかも。

自分だけは戦争でも上手くやれるかもって。

ひょっとしたら出世なんかできたりみんなに褒められたり。


そんなことはなかったよ。

当たり前に私の未来も無くなりそうだ。

そう倒れた兵隊を枕にしながら乱れた息を吐く。

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