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第三話
「あれ。この前は14リルだったのに」
そう青い魚をおばさんに渡しながら訊く。
「嫌だったら買わなくなっていいんだよ」
そう市場のおばさんはそっぽを向く。
ローブの内ポケットをまさぐる。
銅貨が二枚しかなかった。
お腹が鳴った。
でもここで使っちゃうと家賃が払えなくなる。
「じゃあ良いです」
そう踵を返し市場を歩く。
「魔法使いなんぞにもの売ってやってるんだから感謝して欲しいぐらいだよ!」
おばさんの怒鳴り声が私の背中に飛んでくる。
市場の人の鋭い視線も集まる。
嫌われることって慣れないな。
いたたまれなくて煉瓦細工の道を少し早足で駆けた。