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第二十五話
「動かないでくださいよ。ボ、ボウガンが狙ってますよ」
そう血塗れの男は手を震わせながら神父に矢を向ける。
「な、なんだ貴様は。ここは神の家だぞ」
彼は白い息を吐く。
「我々は真実を知りたいだけですよ」
民衆がざわめく。
「真実? 我々? 何のことだ?」
「と、ととぼけないでくださいよ」
そう血塗れの男は興奮した気持ちを抑えられないといった様子で煙草を咥える。
「『奇跡』なんて存在しないということです」
そう彼は青い煙をくゆらせる。
「貴方達の使ってるのはただの魔法だ。白魔法という種類のね」
神父が顔を強張らせる。民衆が抗議をする。
「何て事を!」
「『奇跡』を魔法使いの穢れた力と一緒にするなんて」
血塗れの男はまた煙草を吸う。
「そうかな? では何故彼らは魔晶石に触れようとしない?」
「そ、それは……」
彼は青い煙を吐く。
「恐れているからだ」
血塗れの男はそう言って神父を睨む。
「自分たちも魔法使いだという事実が明らかになることを」
そう彼は力強い声で言った。