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第二十四話
教会は雨に包まれていた。
屋根が滴を弾く音が絶え間なく続いている。
神父さんはいつもの様に市民に囲まれていた。
遠くからも彼を呼ぶ声がする。
「神父さーん」
教会の入り口の方だろうか。
「カーシャもようやく『奇跡』を信じるようになったんだね」
そうメニョは嬉しそうに微笑む。
「うん。ちょっとね」
信仰心なんてのはさらさら無かったけど知りたいことならあった。
誰かを甦らせる奇跡。
それが本当にあるのか確かめたかった。
「神父さーんっ!」
うるさいなあと思って声の方を向くとボウガンが眼に入った。
入口にコートを着た血塗れの男が立っている。
婦人達が甲高い耳障りな声を上げる。
市民たちは鳥の群れの様に一斉に騒ぎだす。
その様子を見て男は満足そうな笑みを浮かべている。
鈍色の矢が不気味な光を放っていた。




