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第二百三十三話

「諦めろよ。屑野郎。ずっと諦めてきたんだろ?」

そう彼の言葉が耳に響く。

ああそうだ。


私ずっと諦めてきたんだ。

だから今その決断をしても。

別に不思議なことじゃない。


諦めつづきの人生だった。


生まれも。

お父さんは呑んだくれ。お母さんはお父さんが死んだ後、違う男をいつもつれこんでいた。


健康だって。

精神不安定だって。身体も弱いって言われてた。


人間関係だって。

いつも嘘ついて。長い人間関係が苦手で。作り笑いしかできない。


お金だって。

稼ぎ方がわからない。みんな嫌がる仕事でも。満足にできない。


未来だって。

何にも見えない。努力していいことがわかんなくていつも不安になる。


全部できてない。

何にもない中途半端な私。

死んじゃっても誰も困らない。


彼の言うとおりだ。

そう彼の蹴りの嵐を受けながら思う。

血が流れ過ぎて頭が朦朧としてくる。

私、本当はね。


私のことあんまり好きじゃないんだ。


だからきっと生きることに真剣になれないんだね。

仰向けになって空を見る。

ああ最後にやっと正直になれた。


もう楽になっても良いよね。


メニョ。クルスさん。アマリアさん。

そしてジャン。私の愛しい人。


涙が浮かんでくる。

私の大切な人達。

今も戦っている私の大切な人達。


「うっぅぅうう」

そうわけのわからない声を出し石造りの手すりに手をかけた。

立ち上がるんだ。小さな魔法を彼の足元に放つ。


床が削れるぐらいの小さな魔法だ。

「うぉっ」

その隙に体勢を立て直す。


「おまえは不死者か?」

白の魔法使いは驚いた顔で私を見つめる。

「違うよ」


私は乱れた息を整えながら立つ。

「ただの人間だよ。でも守りたいものがあるから……」

私は彼を睨む。


「いくらでも頑張れるんだ。心があるから戦えるんだ!」

そうまた手を上げる。魔力を集める。

中途半端な私だって頑張ってみせる。もう私を支えてるのは心だけだ。

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