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第二百二十七話

「意外と根性があるんだな……」

そう白の魔法使いは私を睨む。

私は震える足で立ち上がる。


もう気持ちだけで立っているみたいなもんだ。

今だけは痛みを忘れろ私の身体。

頑張らなきゃ。


役に立たないかもしれないけど。

強くないかもしれないけど。

私だってみんなのために戦いたいんだ。


そう息を乱している私を彼は寂しそうに見る。

「お前は本当に兄貴にそっくりだな……」

「どうしてそんな大切なお兄さんの残した黒魔法を迫害するの?」


不思議に思っていたことを聞いてみる。

「戒めみたいなもんさ」

私にはその言葉の意味がわからなかった。


「結局、兄貴の死が俺の考えの後押しをした一面もあるからな」

彼は腕組みをしながらこめかみに指をやる。

「……兄は優しい人間だった。誇り高い人間だったんだ」


彼は本心からそう言っている様に見えた。哀しい瞳をしている。

「だが周りはどうだ? 醜い人間ばかりじゃないか? あの時、一人でも無理して兄が嘘を言っていることに気付いた人間がいたか? いつも優しくしていた兄がそんなことをするわけがないと弁護した人間がいたか!」


彼は拳を握りしめる。

「あんなにも心の優しい人間が醜い人間の群れに殺されたんだぞ。なのにあいつらは罪悪感すら胸に持たない。そんな奴らばかりが上手く生き残るこの世界を正す人間が必要なんだよ」


彼は胸を胸に掌を置く。

まるでそれが自分だと言わんばかりだ。

「そうじゃなきゃ優しい人間がこの世界からいなくなってしまう……」


白の魔法使いは笑う。

「俺はこの世界に理想郷を作るんだよ。このカラティーヌと一緒にな。そのためには黒の魔法使いには犠牲になってもらう必要があるんだよ」


そう彼は大聖堂の頂点に安置されたカラティーヌ像の肩に手を置く。

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