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第二百十八話
「行方不明者が続出……」
そう彼がまた農夫と話す。
「もう流れ者だけじゃなく今度は薬屋の娘まで」
農夫が曇り空を眺めながら嘆息をもらす。
「どうしたことなんじゃろ」
黒の魔法使いは顎に手をやりながらその場を後にした。
彼は野道を歩いていく。
尖った草が風で揺れている。
家の方向では無かった。
暫く彼が歩くと大きな口を開けた洞窟が目の前にあった。
彼は指先に小さな火を灯しその中に入っていく。
水が滴る音が聴こえる。
その音に交って誰かが動く音も聴こえる。
奥に光も見える。
彼は滑らない様に足元に注意しながら進む。
洞窟の奥に白の魔法使いがいた。
机に棚まである。もう此処で生活できるぐらいの道具が其処には揃っていた。
彼は机の上で何やら作業をしている。
「あれ? 兄さん。何でここに?」
そう彼はいつもの様に笑う。
机の上にはばらばらになった娘の死体があった。




