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第二百十五話

「兄さんの家は人の出入りが激しいねえ」

そう白の魔法使いが頬杖をつきながら言う。

「まぁ弟子が多いからなあ」


「黒法だっけ?」

「うん。そういう名前にしようと思う」

彼は果物を食べながら頷く。


「この力を皆に広めたいんだ」

「兄さんらしいね。皆の幸せのためか。でも個人差が強いみたいだね」

黒の魔法使いは頷く。


「そうなんだよ。そこが悩みの種なんだよなあ」

そう彼は腕を頭の後ろにやる。

「果物のおかわりいかがですか?」


そう奥さんらしき人が中庭に来る。

「結構です」

白の魔法使いが短く言う。


「……そうですか。ゆっくりして行ってくださいね」

そう彼女は頭を下げてまた家の中に戻っていく。


「お前なあ。もうちょっと俺の嫁と仲良くなってくれよ」

「そう? 普通にしてるつもりだけど」

白の魔法使いはちょっと不機嫌そうに答えた。


「ところでお前の『白法』はどうなんだ。みんなに喜ばれてるみたいだけど」

「兄さん程じゃないよ。それにまだまだ皆に伝えられる段階じゃない」

彼は頭を抱える。


「お父しゃん。叔父しゃん」

そう子供達が陽の光を受けた中庭に出てくる。

「おっ来たなあ」


黒の魔法使いはその二人の子供を抱きかかえる。

白の魔法使いは何故か寂しそうな眼でその光景を眺める。


「……兄さんは良いね。みんなに自慢できる結婚相手がいて。可愛い子供達に囲まれて」

彼は頭を抱える。

「仕事もみんなに尊敬されてるし。会う人、会う人、みんな兄さんに頭を下げる」


彼は口元を歪めて笑う。

「ははっ。僕と正反対だね。幸せな人生。僕の持ってないものを全部持ってる。兄さんが心底羨ましいよ……」

黒の魔法使いも悲しげな表情になる。


「そんなことないさ」

「そんなことあるよ」

彼は咳き込む。


「大丈夫か?」

白の魔法使いは笑う。

「ほら。もう身体からして違う」


そう掌に付着した血を見せる。その赤い液体が宝石みたいに輝いている。

「兄さんは健康で頭が良かったから父様も母様も愛した。友達だってそう。だけど僕は、僕は誰も愛してくれなかった。弱いから。心も体も脆いから」


彼は口の端から血を流しながら笑う。

「くだらない人生だったんだよ。つらさに耐えただけの人生だったんだよ。そしてその命さえもう尽きようとしてる。……はは。なんだったんだのかなあ? 僕の人生?」

彼は白のローブで口元を拭う。


「本当に思うよ」

黒の魔法使いは悲しそうな顔のまま子供達を抱える。

白の魔法使いは笑う。


「不幸になる人間と幸せになる人間は始めから決まってるんじゃないかって」


そう白の魔法使いは血に染まったローブを握りしめて涙を流した。

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