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第二百十話

随分長い階段だな。

街からは爆音や兵士達の声が聞える。

みんな戦ってるんだ。


私が教皇を倒しさえすれば……。

唾を飲んだ。

そして気が重くなる。


ああなんでこんな大事な仕事が私なんだ。

胃も痛くなってきた。

私って昔から大事な局面でとちる人間なんだよなあ。


教皇はもう老人だって言うから苦戦はしないだろうけど。

涙ながらに命乞いとかされたらどうしよう。

無抵抗な人間を殺すのは気がひけるなあ。


そうこうしているうちに大聖堂の頂上まで来てしまった。

心なしか空気が薄い感じがする。

広大なバルコニーといった感じだ。


奥に赤い服を着た丸い背中が見える。

あれが教皇か。

私はゆっくりと彼に近づく。


声の聴こえる位置まで来て口を開く。

「……教皇。命を頂きに参りました」

彼は振り向く。


温厚そうな普通の白髪の老人。

殺すのがつらい。

私は腕に紫の光を纏う。


せめて一瞬で。

ごめんなさい教皇。

私は眼を瞑り魔法を放った。


「……ん? あれ?」


掌を確認する。

魔法が発動されない? なんで?

瞬間。私の胸に蹴りが入った。


「うぶっ」


私は床に吹き飛んだ。口もちょっと切ってしまった。

なんで?


老人とは思えない脚力だ。

いやありえないぞ。これは。

そう痛む胸を抑えながら思った。


彼がとぼとぼと近づいて来た。

喉に蹴りが入った。

激痛が身体に走る。叫びながら喉を抑える。


なんで? なんで? 話が違うよ。

老人なのに体術に秀でてる? 

いやそんなんじゃ説明できない動きだぞ。


この動きは若者の身体のそれだ。

彼は私の胸に足をやる。

「あぅっ!」


圧力がかかって骨が折れそうだ。

ジャンより足の力がある。

苦悶の表情でその足をどけようとする。


この土壇場で頭がはてなで一杯になる。

なんで魔法が使えないの?

それに。あなたは誰? 


本当に教皇なの?

そう混乱した頭のまま彼に踏みにじられる。

完全に攻守逆転だ。殺すどころかこっちが殺されそうだ。


痛みで口の端から唾が線みたいにこぼれる。

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