表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
211/242

第二百五話

彼女の登場に兵士達は明らかに動揺の色を隠せていなかった。

顔面が蒼白になっているものすらいる。

怯えている証拠にまるでこちらに近づこうとしなかった。


「ここは私に任せてください。カーシャさん達は教皇を」

「……でも」


彼女は微笑む。

「私しかこの数を止められませんから」

そう彼女ははっきりとした声で言う。


兵の指揮官も士気を取り戻そうとする。

「ひ、ひるむな。ある意味この戦最大の首級だぞ」

「間違いなく世界最強の魔法使いだ。討って手柄にせん」

「やつとて人間。それにこの数、押し切れる筈だ!」


蜘蛛の脚のような雷撃が広がった。

その白い光に兵達が陣形を乱す。

稲妻を纏った彼女の髪が浮かぶ。


「なに寝言を口にしてるんですか? 私の強さは」

彼女の艶やかな唇が動く。

「一緒に戦ってきた貴方達が一番わかってますよね?」


彼女の言葉に兵士達の足が止まる。

これが本当の脅し文句か。

私のと全然違う。敵が本当に怯んでいる。


「アマリアさん死んじゃ駄目ですよ」

そう階段に足をかけ言う。

彼女は答えに詰まった。きっと彼女にでも三千の兵を倒すのは困難なことなんだ。だから強い言葉で少しでも敵兵を減らそうとしたんだろう。


彼女は死を覚悟しているのかもしれない。


それでも彼女は微笑む。

「もちろんです。平和になったら一緒に」

はじめて彼女の泣き顔を見た。


「ルンプーを食べて。買いそびれた兎ちゃんも買いましょうね」

まるで最後の言葉みたいだった。

私も思わず涙してしまう。


「ええ! 絶対に! 約束ですよ!」

私がそう言うと彼女は今まで一番綺麗な笑顔で頷いた。

眼尻には涙が浮かんでいる。

私たちが階段を駆けのぼると彼女の声が響いた。


「さあ。これが最期の『雷神』の戦いです! 死にたい人から前に出てください!」

その声と一緒に雷の轟音が響く。


私は振り返らず階段を駆けた。その速さで涙さえ斜めに流れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ