第二百四話
「ジャン。誰かのために足止めになる覚悟はある?」
「お前がその気なら構わんよ」
その冷静な口調に笑ってしまう。
私たちなら一瞬だけでも三千の兵も足止めできるかもしれない。
その間に誰かがこの階段を駆け上がって教皇を討ってくれるだろう。
「よし! やってやろうじゃん」
ただでは死なないぞ。
私たちが犠牲になっても。
誰か正義を貫いてくれる筈だ。
私とジャンは階段を飛び降りる。
平地に立つと彼らが私達をとり囲む。
腕に絡めた紫の光で彼らを脅す。
こう近くで兵達に肉薄すると理解する。
私たちがここで死ぬってこと。
私にはこの兵士達を全員倒すほどの魔力はない。
だけど良いよね。
正義を貫いて死ぬなら。
悪い事をして生きるよりずっと良いよ。涙が浮かんでしまう。
最期の火を灯すぞ。
そう決意した瞬間、辺りに巨大な雷の柱が何本も落ちた。
赤い兵達の動きも止まる。いつかみた雷に息を呑んだ。
眼の前に見慣れた金色の髪がなびく。
その女性が目の前に飛び込んできたのだ。
私の知ってる女性。最強の魔法使い。
「間に合って良かったです」
そうアマリア・ヴァルトロメイは微笑んだ。
その身体に白い稲妻を纏っている。




