第二百三話
兵士達の剣を避けながら前に進む。
魔法の光も飛び交っている。
私も炎を放ちジャンも剣を振るう。
しかしここにとどまってる暇は無い。
終わりはここじゃないのだから。
「前に進め!」
そう黒いローブの魔法使いが道を開いてくれる。
「紫電の魔法使いアビゲイル・ファリスを知らん訳じゃないだろ? ここは俺にまかせとけ。教皇の首を取ってこい」
そう片目を前髪で隠した男が手を交えながら言った。
全然知らなかったけど頷く。
「ありがとう!」
そう彼が開いてくれた道を駆ける。
大聖堂の巨大な階段も上った。
心が高鳴る。
いける。いけるぞ。
近衛師団がいるのはわかってたけど大した数じゃない。
踊り場まで出た。息を落ち着ける。
ここからなら街も見下ろせる。
別の階段下の光景を見て胃に冷たい物が落ちた。
「……そんな」
遠くに見える赤い兵士の群れが私の高揚した気持ちを奪う。
現実なんてこんなもんか。
感情的で瞬間的な衝動なんてさ。
巨大な力の前にかき消されてしまうのが当然なのかな。
そう階段の下の平地にただずむ三千程の無傷の兵達を眺めて思った。
数百程度の兵に善戦して喜んでいた自分が馬鹿みたいだ。
唇を噛んだ。
これだけの兵を足止めする方法を私は思いつかない。
強い力さえあれば……。
そう心の底から望む。
腕に紫の光が絡み付いた。




