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第二百話

「なっ貴様ら。自分達が何を言ってるのかわかってるのか?」

そう大司教がたじろぐ。

「まぁ良い。現実を知らない馬鹿どもめ」


彼は指を鳴らす。

練兵場の周りの兵達がボウガンを構える。

そうだこれがあるじゃんか。


どうするのジャン?


「ふふ。眼が覚めただろ。おとなしく黒騎士になりなさい君達。全員が反乱を起こすなんて前代未聞だよ。そうしたら、そうしたら私の立場が……」

そう口元に泡を浮かべながら大司教は言う。


こんな状況でも保身が第一に頭に浮かぶ当たり流石出世してきた人間だと思う。

「私の軍勢だけではないぞ。グランド将軍の精鋭もいる。私の手勢と違いこの戦争を生き延びてきた本当の精鋭達だ。その怖さは諸君らが一番わかってるはずだ。さあ将軍……」


グランド将軍は頷く。

「全兵士に告ぐ! 裏切った魔法使い及び灰騎士を」

その聴きなれた大きな声が寒空に響く。


「全力で守るのだ!」

「はっ!」

その大きな声と供にボウガンを持った大司教の兵士達が次々と斬られていく。


「グランド将軍なっ何を!? 血迷われたか?」

大司教は顎が外れるくらい大きく口を開けた。

「聞いたよー。君達、地下でいろいろやってたそうじゃないか? 人間の尊厳を踏みにじる行為をね」


そうグランド将軍が口ひげを触りながら言う。

「地下組織の連中にも蜂起を促しておいたよ。教会の秘密を公開した上でね。士気も上がるだろうなー」


灰騎士や魔法使い達も散らばる。戦闘に参加するつもりなんだ。

ジャンも寄ってきた兵士達を切り捨てはじめた。

将軍の護衛と大司教の護衛も鍔迫り合いをはじめた。


もう敵だとはっきり認識したんだ。


それでも大司教は眉をひそめて将軍に抗議する。

「信じるものか! 証拠が無い」


老軍人は笑う。

「確かにな。だが当人達の証言ではどうかな?」

そう護衛の向こうでグランド将軍は笑う。


「今頃、吾輩の手勢が救出してる頃だろう。彼らの声、身体の傷、それならば民衆も信じるだろう。本当の声は何故か人の心に響くからなあ」


大司教の顔が青ざめる。

「こんな反乱すぐ鎮圧されるに決まってる!」

「どうかな? 儂の軍団はとんぼ帰りで聖都に向かってるぞ。皇帝を追うために軍団を外にまわした聖都が持ちこたえられるかな? 勝算は無いわけじゃない」


グランド将軍はつづける。

「それにお主ら。どうして灰騎士がこれほど反逆に加担したか理解できんだろ?」


大司教はその言葉に眉をひそめる。

護衛たちの鍔迫り合いはつづいていた。


「戦争は地獄だ。その中で寝食を供にしてきた仲間なんだぞ灰騎士と魔法使いは。現場の人間にしかわからない連帯感がある。それをお前らは上から見て利益のために灰騎士が魔法使いを切り捨てるのが当然だと思ったんだろう?」


老軍人は大司教を睨む。

「人間の心をなめるなよ。損得勘定でわりきれるほど単純なものじゃない!」


グランド将軍は叫ぶ。

「貴様らこれが正真正銘最後の戦いだ! 正義のための戦いだ! 命を燃やせ! たった一度の人生! お前らが思う正義を貫いて見せろ!」


彼は髭を触り笑う。

「大司教。わしも最低な人生を送ってきた……。だが最後くらい美しい人間になりたいんだよ。自分が思う正義で華を咲かせてみせる。これが儂の人生じゃ。後悔はないぞ。お主はどうだ?」


そう戦火の中、彼は真っ直ぐな瞳で大司教を見据えた。

その言葉にただ彼はたじろぐばかりだった。

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