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第百九十四話
朝の陽を受けて霜が輝いてる。
彼は雪を踏み散らしてやってきた。
上機嫌な顔だ。
「ミチカ待ってろよー」
そう彼は微笑んで鼻歌すら唄ってる。
彼は家の階段を登る。
真鍮の取っ手を掴む。
鍵がかかっていた。
「おーおー。あいつ鍵閉めるなんて意外としっかりしてるな」
彼は戸を勢いよく叩く。
「起きろ―。ミチカ。お土産あるぞ。良い話だってあるんだ。喜ぶぞー」
そう彼は満面の笑みで戸が開くのを待つ。
いくら待っても扉の向こうは静かだった。
「おいおい。ミチカ。寝ぼすけも……」
彼の眼が大きくなった。
彼はすぐに扉の前の鉢植えの下を確認する。
銀色の合鍵がそこにあった。
彼はそれを握りしめ慌てて階段を駆け降りる。
雪を跳ねて彼は公園に走った。
彼は白い息を吐いて妹を探す。
彼が妹を見つけるのは簡単だった。
ベンチに不自然に積もった雪があったからだ。




