第二十話
汚い毛布に包まれて眠る。
夜の闇が眼に優しい。
「戦争か……」
全然実感がわかなかった。
「ちゃんと出来るかな」
窓から入ってくる青い月の光に呟く。
メニョにも言えなかったな。
腕を額に載せて天井を見ていると木戸が叩かれた。
私は驚き身をすくめた。
こんなに早く出発なんて。
毛布を引きずったままおそるおそる扉を開けた。
橙色の光を放つランプを持って大家さんがいかめしい顔をしている。
「カーシャさん。今日こそ払ってもらいますよ」
私は安堵の顔を浮かべる。
「なんだ。大家さんかあ」
私は安心して扉の端に身体をだらしなく寄せた。
「私の顔を見て喜ぶなんて珍しいな」
「あ。家賃ですね。待っててください。今日はありますよ!」
そう私は慌てて部屋に戻り木棚から銀貨を取り出した。
そして彼の掌に添える。
「おっこりゃ。なんじゃ。銀貨が三枚?」
大家さんは驚いた顔をしてランプでそれを照らす。
「今までの分です」
彼は不思議そうな顔をして私を見たが暫くすると黙って扉を閉めた。
「偽物じゃないだろうな……」
そんな声が階段が軋む音と一緒に聴こえた。
私はまた布団に戻った。勢いよく入ったから少し埃が舞ったと思う。
また腕を額にやる。
この前の軍人さんとの話を思い出した。