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第百九十二話

貴族の家は暖かい暖炉がくべられている。美味しそうなお菓子。

それに美味しそうなお菓子。楽しそうなボードゲーム。

子供にとって魅力的な空間がそこにあった。


幼少期にこの楽しさ溢れる世界から抜け出せる人間なんていないだろう。

ジャンももちろん例外じゃなかった。

ずっと貧乏な生活をしてたんだから尚更だ。


時計の針を見るのも忘れて楽しんでいる。

窓の外はすっかり紺色に染まっていた。

「もう僕たち仲間?」


そうジャンがボードゲームをしながら恐る恐る貴族の子に聞く。

「ああ。いいぜ。一人ぐらい毛色の違うやつがいてもいいだろ」

「良かった。じゃあ妹なんだけどさ。あんまり苛めないでやってくれるかな。……君は年下の連中にも顔が利くだろ」


そう彼は瞬きしながら貴族の子に訊く。

「構わないよ。簡単なことさ」

その言葉にジャンの顔がほころぶ。


「バースデーケーキ持ってきたわよ」

そう貴族の子のお母さんが銀盆に載せたケーキを持ってくる。

子供たちが歓声を上げる。


「うん。でも今年のはちょっと砂糖がききすぎてるよ」

そう貴族の子が口をつけ文句を言う。

ジャンはというと感動で言葉も出ないと言った様子だった。


「ははっ! お前貧乏だからこんなの食べたことないんだろ」

彼は見栄もはらず嘘もつかず頷いた。

「うん。世の中にこんなに甘くて美味しい物があるなんて……」


彼は本当に感動した様子だった。口にクリームをつけて呆然としている。

その様子に貴族達も一瞬口をつぐむ。

「……おいおい! 貧乏もたいがいにしろよ」


そう貴族の子が明るく言う。

彼も冷静になったのかその声に笑う。

暖かい暖炉。幸せな時間。


でも彼はその楽しい時間のせいで。

大切な妹のことをすっかり忘れていたんだ。

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