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第百八十八話
聖都の公園に二人で来た。
森林に囲まれて静かな場所だ。
街路樹が夕陽に照らされて美しい。
あんなに彼が嫌がってた場所。
今日は何故か彼の方から誘ってくれた。
昨日あんなのを見た後だからこの美しい世界が嘘みたいに思える。
でもどっちも現実なんだ。
彼は無言で歩き続ける。
そして小さな木のベンチの前で立ち止まった。
座らないんだろうか。
「この場所で妹が死んだんだ」
私はその木椅子を見る。風雨で磨かれて角が丸くなっている。
「俺が死なせてしまったんだ」
そう彼は苦しそうな声で言う。
私は伏し目がちに頷いた。
すると胸に振動が来た。あれ? また竜の時と同じ?
『お兄ちゃん』
『あんまり遠くまで行くなよミチカ』
白くなった視界の中に二人の兄弟の姿が見えてきた。




