第百八十二話
「帝都をっ」
そう仕官が息を吸って握った拳を下げる。
「攻略したぞー!」
仕官が拳を高く上げながら言うと周りの仕官もその動きに合わせる。
「おー! やったぜ」
「どうなんもんだい!」
「有言実行だな!」
そう葡萄酒を片手に騒いでいる。
帝都の広場には音楽が奏でられ夜空には花火すら舞っていた。
戦争の終わりを告げるみたいに空に散っていく。
「お前はいつも独りだな」
そうジャンが私の傍に来た。
「……騒がしいの好きじゃないから」
もう戦わなくて良いんだ。
「さっき敵国の召使を助けてやったんだって?」
「うんお世話になったからね。発言力が少しでもあって良かった」
葡萄酒を口につける。
「さっき将軍が探してたぞ」
「そう」
なんでだろ。
「私もう帰れるの?」
「ああ。将軍もそう仰っていた。ただ帰りに一度聖都に寄るぞ」
私は首を傾げた。
「今回の戦で活躍した灰騎士と魔法使いに叙勲があるそうだ。その中に俺達も含まれている」
彼は嬉しそうに笑う。
「なんだかんだ言って開戦当初から生き残った数少ない灰騎士と魔法使いだしな」
「良いコンビだったのかな?」
「ああ! もちろんだ! 最高のコンビだったよ」
酔ってるのかなジャン。でも私も赤ら顔で微笑んでしまう。
「じゃあ」
そう透明なグラスを高く上げる。
「最高の二人に乾杯」
彼も嬉しそうな顔で頷く。
そうグラスを合わせる。
花火の緑や赤の光に照る広場。
私たちの戦争がやっと終わったんだ。
故郷に帰れるんだ。そう思うと杯がすすんだ。大好きな人と見る花火。
この夜を胸に焼きつけておこう。だってもうお別れが近いから。




