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第十八話

「世間で語られてる事実と違い我が軍の状況は芳しくない」

灰色の服の男は冷静な口調で言った。

老軍人は眉間にしわを寄せながら話す。


「ウェルトミッドの戦いに参加した大多数の部隊が壊滅した」

そう彼が話す度に白い髭も動く。

「それは我が軍全体の三割にあたる」


老軍人は悔しさに耐えられないといった様子で語る。

「でも三割ぐらい……」

みんなの視線が私に集まる。


「カーシャ君。自分の身体が三割無くなってしまう状況を想像してごらん」

そう先生が耳元で優しく教えてくれた。

私は右上を見て想像してみる。確かに大変かも。


大丈夫かという空気が一瞬流れたが老軍人は咳払いをして場の空気を戻す。

「そもそも軍隊が壊滅する状況が稀なのだ」

彼はため息を吐きながら言った。


「帝国軍はそれほど強いのですか?」

私もなんだか彼に慣れてきたのかずけずけ質問してみた。

「正確に言えば」


灰色の服の男が代わりに答えた。

「新しく即位した皇帝が我々の予想を越えていたのだ」

「全く十代の若造と思って侮ってたわい」


「十代の皇帝……」

何故か私はその言葉を繰り返してしていた。

白髭の軍人は机に肘を置き忌々しそうに頭を抱えている。

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