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第百六十七話
「お前竜なんだろ?」
そう滝の前で釣りをする笑顔の若者。
『そうだが』
おかしな奴だな私を見ても怖がらんとは。
まあ言っても伝わらんか。
そう水の中に頭を突っ込む。水と魚を同時に吸い込んだ。
「名前は?」
『ヴァルディングス』
「良い名前だな」
驚いて飲んでた水を全部吐き出してしまった。
魚もさぞ喜んだことだに違いない。
口から水を滴らせ鼻面をその男に近づけた。
『お主。私の言葉がわかるのか?』
「おっ。何だ。みんなは喋れないのか」
そう彼は明るい顔で笑った。
「相手の気持ちを考えたら誰とだって仲良く喋れるさ」
そうけらけらと笑う。
変わった男だ。また水を飲みながら思う。
滝の飛沫が鱗に当たるのが気持ち良かった。




