17/242
第十七話
私は戸惑った顔をする。
「あのお言葉ですが私がですか?」
そう胸に手を添えて聞いてみる。
老軍人は黙って頷く。なんで私が。
そう思ったが途中で思い出した。
後方支援の仕事なら魔法使いにもある。
炎熱系なら湯を沸かしたり肉を焼いたり。
冷却系なら食糧を腐らせないように管理する業務だ。
「あ。なるほど後方支援ですね」
彼らは首を横に振る。
「前線に出る兵隊としてだ」
その言葉を聞いて脇から冷たい汗が流れた。
「で、でも魔法使いは体力、精神ともに兵士としては不適格で」
老軍人は机を拳で叩く。
「そんなものは小娘に講釈されるまでもなくわかっとるわい!」
私はびくっと身をすくめる。暫く沈黙が場を支配する。
それでも震える唇で質問してみた。
「し、しかい、しかし教国は戦いはじめて無敗のはずです。この前もウェルトミッドで大勝利したと。魔法使いの力なんて……」
すると灰色の服の男が初めて口を開いた。
「それは事実ではない。民衆の士気を上げるための政治的宣伝だ」
低い声だった。
「我々はウェルトミッドで敗北したんだよ」
その男は私の瞳を見ながら言った。