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第百六十三話

皇帝旗が遥か遠くではためいている。

私たちは整列し号令を待つ。

横と縦を見る。靴の位置すらずれてない。


一万人の無言。その重圧でお腹が鳴りそう。

誰でも良いから早く何か喋ってくれ。

白馬に乗ったグランド将軍が私たちの前を何度も往復する。


「諸君! これが最後の決戦だ!」

わかってるよと心の中で呟く。

「最後だから本音で話そう。わしは教会の連中が好かん!」


兵達がざわめく。笑ってる兵士すらいた。

「将軍これだけ大勢の兵の前では少しまずいかと。それに将軍はだいたいが本音ですよね」


そんなことを側近が話す。


「そうじゃ。わしはこの齢になっても正直が好きじゃ。今更変えられん」

「名門の生まれなのにそんなんだから今まで出世が……」

そうぶつぶつ側近がこぼしてるのが聴こえた。


「だから貴様らにも正直な気持ちで戦って欲しい!」

そう白銀の剣を抜いた。

「国も宗教も正義も関係ない! ただ自分のためだけに戦え!」


彼はそう言って馬を走らせ兵士達を鼓舞していく。

「まず生きる! 次に名誉だ! この機を逃せば英雄になる機会は一生失われると思え!」


兵士達がその言葉に鬨の声をあげる。


「貧しい者も貴族も機会だけは平等だ! 貧しい者は立身出世の好機だ! 世界をひっくりかえしてやれ! 貴族は己の名を歴史に刻め。一族の名を語る時、貴様らの名が一番最初に出る様な活躍をしろ!」


彼は尚も馬を走らせる。

「何度も言う! これが最後の決戦だ! この大舞台に立てるお前らはこの地上で最も勇気のある戦士達だ! 世界で一番勇気のある戦士達だ! その意地を見せてやれ! 史上最強の戦士の強さを見せてやれ!」


そう剣を高く突き上げ声を張り上げる。

その言葉に兵士達は興奮と熱気で声を合わせる様に張り上げる。

耳が痛くなるほどの鬨の声だった。


グランド将軍は馬の向きを悠然と変える。

それから皇帝旗に白銀の剣を振る。

「最後の敵はあの下だ! 最後の平和を勝ち取れ戦士達!」


そう今までで一番大きな声で叫ぶ。

その声すらかき消すぐらいの兵士達の大きな声が空に響き渡る。

その巨大な音と同時に地面を震わせる足音が響く前列の兵士達が駆けだしたのだ。彼らが蹴り上げた土が頭の上まで飛んでくる。

今。

戦争がはじまったのだ。

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