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第百六十話

眼が疲れてきた。それに頭も朦朧とする。

でも戦わなきゃ。息も乱れる。

一発防いだだけじゃ戦闘は終わらないんだ。


ジャンの周りにいた男たちは簡単に斬られた。

きっと私の魔法で一瞬緊張の糸が切れてしまったんだろう。

その隙を彼は見逃さなかった。


一人、二人、三人、四人。

まるで劇の一場面みたいに彼らは倒れる。

劇と違うのは本当に耳障りな声が聴こえるだけ。


その声もやがて尽き静かになった。


ボウガンの男は二階に続く階段を上り逃げていく。

私達二人は警戒しながらその階段に足をかけた。

木板が軋む。


上がりきるとひらけた部屋があった。

正面に古い扉がある。

「どうやらこの小部屋にこもってる様だな」


彼は石造りの壁を叩く。大分古くてところどころ欠けた部分がある。

「結構厚さがあるな。蹴破るのは無理か」

彼は考える顔をする。


「入ってもこの微妙な狭さがやりづらそうだな。敵が何人いるかわからんが死にもの狂いで飛びかかってこられたら、こっちが一人斬り殺してる間に身動きがとれなくなってしまう」


ジャンは口元に手を添える。

「さてどう攻めたもんかな」


私は黙って石造りの壁をさする。ひびがあった。

私は眼をその裂け目に近づける。向こうの部屋が見える。

確かに狭い部屋だ。二、三人以上は間違いなくいるな。


「……ジャンそこの木椅子取って」

「うん? なんでだ。それになんかお前疲れた顔してんな。大丈夫か」

彼はそう言いながらも木椅子を持ってくる。


「ドアノブにかけておいて。そしてそれを押さえてて」

彼はますます意味がわからないといった顔をする。

私はひびをさする。


理屈なら出来る筈だ。

掌に炎を出す。そしてそれを壁の裂け目から向こうの部屋に注ぎ込む。

火炎を放射した。


私の炎が向こうの部屋にどんどん流れ込んでいくのがわかる。

同時に部屋にいる男達の悲鳴も聞こえてくる。

でももう何も感じない。


ジャンは驚いた顔を浮かべながらも言いつけた通り椅子を押さえてる。

ドアノブが激しく震えている。

それでも私は火炎を放射するのを止めない。


「おい。もう良いだろ。もう戦闘不能になっている頃だ」

私は顔を火で照らしながらも無視する。

「おい!」


ジャンは私の言いつけを破り椅子から手を離した。

近寄ると私の頬をはたいた。

「やりすぎだぞ! それにお前らしくない……」


私は頬を触ったあと普通の瞳のまま首を傾げる。

「何言ってんのジャン?」

私は唇を震わせて笑う。


「戦争やってんだよ。やりすぎなんてないでしょ?」

きっとリリィさんと似たような笑みを浮かべてる。

「それにこの人達は私たちを殺そうとしたんだよ。やりかえして何が悪いの?」


彼は私の言葉に黙る。

「それに、それに、戦いでこれから、いっぱい、いっぱい活躍しないと」

私は独り言みたいに舌を動かす。


「あなたを私のものにできないでしょ?」

私はそう口だけを笑わせた。

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