第百五十四話
「竜の啓示ねー」
彼は鶏肉を食べながら言う。
鶏料理大好きだな。
「まあ昔から良く聞く話だよ。過去には王族なんかがわざわざ竜の棲む洞窟まで啓示を貰いに行ってたっていう話だからな」
私は眼を輝かせる。
「じゃあ当たるんですね! 私って凄い魔法使いになれるんだ!」
彼は骨を陶器に入れる。
「五分五分らしいぞ。何百年も生きてる経験で言ってるのか、それとも本当に未来を予知する力があるのかはわからないが。竜によっては適当な啓示を言って人間の無知を嘲笑ってた奴もいたそうだからな」
ぷぷー騙されてやんの。
いやー人間って素直で良いですねー。
そんな竜達の会話を想像する。
そうなんだと肩を落とす。
「ん? 何か世界を変えようと思ってたの?」
私は頷く。
「ええ主にファッションの分野で。魔法使いの服装に革命を起こそうかと」
「きっと竜はそんな啓示するほど暇じゃないと思うよー」
そんな話をしてると広場が騒がしくなった。
「ん? なんだ今日は聖都にお祭りなんかあったかな」
そうゴーディさんが窓から顔を覗かせる。
瞬間ボウガンの矢が飛んで来た。
それが彼のこめかみをかすめた。
「……死ぬところだった」
そう彼は表情を失う。唇もわなわな震わせてた。
冗談じゃないよ。黒騎士がこんな格好悪い死に方するなんて。そうぶつぶつ言っている。
私とジャンも窓際の壁に背を預け外を見る。
向かいの建物になんだか荒っぽい人達が集まって大きな声を出してる。
「あーあ。地下組織の連中もいよいよ本気かあ……」
そうゴーディさんが窓枠に手をやり静かに呟いた。




