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第百五十一話

「つまりこの不死は完全ではないんだ」

私が彼の身体を試しに斬ってみる。

ジャンの剣って意外と重いんだな。


「状態をある時点に戻す様に時魔法をかけてるだけだ。身体全体にな」

おいしょっとそう剣を振ると彼の足が斬れた。歪みが出来る。

「しかし脳。記憶力だけは別にしたかった。その魔法式を見つけるのは相当の時間を要したよ」


彼はつづける。


「しかし其処を半端にいじったばっかりに俺は最低な永遠を手に入れちまった。身体は紛れもない不老不死だが脳だけが違うのさ。ゆっくりだが確実に老化してる。やがて俺は何も考えられなくなるだろう。集中力も記憶力も間違いなく低下してる。残るのは悲しい思い出ばかりさ。最後には発狂することうけあいだ」


「死ぬよりつらいですね」

思わず本音をもらしてしまった。

「ああ。本当さ。地獄だよ」


そう彼は溜め息を吐いて椅子に座る。

「あの娘。今俺に良くしてくれるあの娘の名前。それすら覚えられないんだ……」

そう彼は椅子の背もたれに頭を預けながら言う。


「愛した妻。その子供達。みんなみんな俺より先に死んじまった。こんな地獄が他にあるかよ」

そう彼は目元に腕をやる。


「神様。不老不死なんて返すから俺を死なせてくよ……」

そう彼は懺悔する様に眼を隠しながら言う。

彼は腕を戻し背もたれから体を起こす。


「ただ最高の魔法使いになりたかっただけなんだ……。もっともっと知識の高みに近づきたかった。それには時間が足りないことは明白だった。あいつもそれに共感してくれた」


「あいつ?」

私はレオさんに聞いてみた。


「齢の割には若く見えたな。魔法の知識は相当なものだった。確か西の村から追放された魔法使いだって言ってた……。俺に共感してくれた。孤独な気持ちがわかるって」


私の瞳が大きくなった。

追放された魔法使い? 魔法の知識は相当なもの?

その時代でそんな魔法使いは私の中では一人しか思いつかない。


黒魔法の創始者ヴィンセント・ブランドだ。

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