第百四十九話
「そうです。私が不老不死の魔法使いです」
そう金髪の若い男の人がお茶を淹れてくれる。
「どうぞ。熱いですから気をつけて」
「ああ。これはこれは。どうもご丁寧に。」
「……ありがとうございます」
私は礼をしたまま頭を上げない。思ってることが顔に出ちゃいそうだから。
嘘臭い。
すんなり会えすぎだろ。
聖都からちょっと離れた山村に普通にいるけど大丈夫か。
「もう生きててかれこれ250年くらいになりますかねー」
そう若い金髪の男は遠い眼で言う。
教会が調べなかった理由も頷ける。
却下したのは調査するのも馬鹿馬鹿しいって意味だったんじゃないのか。
私は咳払いしてから質問してみる。
「200年ぐらい前ってどんな感じだったんですか? 聖都の街並みとか? 人の考え方とか?」
彼は私の瞳を見つめる。意外と綺麗な瞳だと思った。
彼は思い出す様に険しい顔をする。
「うーん。忘れた! わからん! 何せいろんなことを経験してるから」
詐欺師だな。
こんな寂れた山村を活気づけるためのくだらん伝説作りなんだろ。
田舎じゃ良くある話だ。名産品買って聖都に帰ろ。芋だっけ。
「ジャン帰ろうよ。きっと若いけどこんな働き方しかできない可哀想な人なんだよ」
そう失礼なことを彼の耳元で囁く。
彼は黙って席を立つ。
お。帰る気になってくれたか。
瞬間。彼は剣を引き抜き若者の腕を斬り落とす。床に彼の剣先が刺さった。
私は顎が外れるほど驚いた。
「な、何やってんのジャン! 確かに人を騙すのはいけないことだけど……。こんな前途有望な若者を。正義感の塊かお前は!」
「す、すみません」
そう恐る恐る被害者を見る。すみませんですむわけない。
あれ?
切られた箇所がなんか変になってる空間が歪んでるっていうのかな。
細かく震えている。不思議な音もする。細波をもっと早くした様な音。
暫くしたらその歪みと音は無くなり斬られる前の腕に戻っていた。
「……間違いない。やはりお前が」
彼は剣を鞘に戻し若者を睨む。
「不老不死の魔法使いレオナルド・アクレスだな」
その言葉に彼は先程斬られた腕を難なく動かし頭を掻く。
「……まったく乱暴な客人だな。近頃の若者は礼儀がなってない」
そう余裕気な口調で言うと彼は口に手を添えて笑った。




