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第百四十六話
教会のステンドグラスが太陽の光を七色に変える。
教会図書館。聖都を離れる前に絶対に寄っておきたい場所だった。
「これが黒魔法の創始者……」
そう薄茶色の本に眼を落とす。
ごわついた黒い長い髪。精悍な顔立ち。神経質そうな瞳。
「やっと会えた……」
ヴィンセント・ブランド。
貴方はそういう名前なのね。
私の御先祖様かも知れない人。
悪そうな顔してる。
どうして弟を殺したの?
そう彼の挿絵の髪を撫でてみる。
貴方の罪で私苦しんでるんだよ。
好きな人と一緒になれないんだよ。
そう何百年も前の御先祖様に愚痴を言ってみる。
他にも文章と供に挿絵つきで白の魔法使いカーマイン・ブランドの紹介も書いてある。誠実で高潔な人柄か……。
なんでこっちが私の御先祖様じゃないんだよ。
そう掌を額にのせて心の中で愚痴る。
己の血を呪ってしまう。
人に自慢できる血が欲しいよ。
誰も知らない場所にいけばもう誰も私を馬鹿にしないんだろうか?
そう静かな図書館で苦悩した。知らない誰かが紙をめくる音だけが耳に残る。




