第百四十四話
「ふーん。これが大聖堂か」
間近で見ると首が伸びてしまう。
信じられないくらい高い建物だな。
帝都のお城より凄いぞ。これは。
その様子を見て大工さん達が笑う。
「御嬢ちゃん。聖都ははじめてだろ」
なんでばれたんだ。
彼等は笑う。
「田舎の人はすぐわかるよ。高い建物をそうやって見るから」
どうせ西の小さな魔法都市の生まれですよ。
でも本当に驚いた。世界で一番大きな建物なんじゃないだろうか。
「なんせ二百年近く経ってもまだ完成しない建物だからねー」
「ふーん二百年。……二百年!?」
たしかに聖堂のあちこちに大工さんらしき人達がいる。
「そうなんですか。新しい場所に新大聖堂みたいな形で作らないんですね。そっちの方が絶対楽だと思うのに」
大工さん達も頷く。
「わしらもそう言うんだがね。なぜか教会は絶対に首を縦にふらんのだよ。もう取りつく島もないくらいさ。こう同じ様式で増築、増築だと創作意欲が刺激されないよなー」
そう彼は仲間達に声をかける。
「いやでもこう外に大きな階段や小さな階段、踊り場がたくさんある建築好きですよ。こう『高みに昇ってく』っていうか」
その言葉に大工さんたちも誇らしげな顔をする。
やっぱり自分の作ったものを褒められると嬉しいんだろうか。
「案外この場所に秘密をたくさん隠してるんじゃないのー?」
そうジャンに冗談気に言ってみた。




