第百四十話
久しぶりにあったゴーディさんは上機嫌だ。
「おう! おう! 一杯食えお前ら俺のおごりだ!」
そう聖都の料理屋でクルスさんとジャンの背中をばんばん叩く。
「今日はちゃんと飲んでるか。おじさんチェックしちゃうからなー」
「飲んでます。飲んでます。だからそんな顔近づけないでください」
「しかしクルス。お前すごい美人と組んでんだな。しかもパッキンの」
発言がいちいちおっさんくさい。
アマリアさんが陶器のカップに口をつけながらおずおずと会釈する。
「俺この戦争が終わったら結婚しようと思ってるんです」
「死ぬよ。君死んじゃうよ。そんな事言ってると」
彼女も黒騎士につづいて顔を真っ赤にして怒る。
「ホントですよ。そんな大切な言葉を冗談に使うなんて信じられません」
「怒るなよー。もう可愛いなあ。それに冗談とも限らな……」
三人が騒いでる。なんかこんな光景も懐かしい。
「でもゴーディさんが手空くって珍しいですね。休暇ですか?」
そうクルスさんが聞く。
「ああ。護衛するはずだった大司教が殺されてね」
そう彼は鶏肉を齧りながら言う。私たちが顔色を変える中、平然と食事をつづける辺りやっぱり黒騎士なんだなと思う。
「地下組織の連中だよ。『魔法解放戦線』『ザハノーバの春』その他諸々。どれかわからんけど。まっどれかに殺されたんだな」
「……最近、動きが活発ですね」
クルスさんの言葉に彼も頷く。
「戦争も終盤だからな。焦ってるんだろ。この機を逃したらってね」
「ってことは暫く護衛も忙しくなりますね?」
彼は首を横に振る。
「……教会は黒騎士も戦線に投入するつもりだ」
その言葉にジャンとクルスさんが驚いた顔をする。
「なっなんで!? いやそりゃ有難いですけど。……ゴーディさん達が戦場に出るのは想像できないな。一人で砦落としそう。でもよく教会上層部が許可しましたね。あの人達って自分の命を守るために最強の騎士を傍に置いてるんでしょ。自分の命を最優先したい人間がなんで?」
「その通りだ。だから出る黒騎士は一人だけだ。苦肉の策ってところだな」
そう彼は指を一本立てる。
「苦肉の策?」
彼らは意味がわからないといった表情で眉をひそめた。




