第百三十四話
出来た!
そう自分の掌に宿る炎を眺める。
信じられない。
……先生と同じ炎を。
半端だった私が。
「おいなんか知らんが笑ってるぞ」
「あれじゃないか。……もうお前らを殺すのが嬉しくて嬉しくてしょうがない。そういう気持ちなんじゃないか」
彼らがひそひそ何か喋ってる。しかし私には喜びで半分も耳に入ってこなかった。
「魔法使いはきてる奴が多いっていうしな……」
「ああ。間違いない狂気に満ちた表情だよ。時間をかけてゆっくり俺達を焼き殺すつもりの顔だよ。俺はこう見えても洞察力には自信がある」
彼らが何かぶつぶつ言っている。
その後なぜか彼らは出口に向かって一目散に駆けだした。
私は炎から眼を離す。すると彼等の背中が見えた。
「ん? どうしたんだ。やっと私も戦えると思ったのに」
静かになった部屋で炎が燃える音だけが聴こえる。
私は身体を斜めにして笑って一回転してみる。
炎が空気を吸って大きくなる。
流れる私の炎が美しい。
成長できたのが本当に嬉しかった。
立ち止まって静寂が広がるとちょっと冷静になってくる。
そうだルシエさん。あの戦況の報告だときっとまだ救出できてない。
「……私の出来ることをしなきゃ」
そう思い出したように広場を走る。
消えろと手を振ると大きな炎が消え煙が流れる。
いつか教室で嗅いだ匂いと一緒だった。




