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第百二十九話

「……この際だからはっきり言っておこうか」

私は乱れた息を吐きながら足を上げようとする。

「お前、自分を特別な人間だと思ってるだろ?」


低く冷たい声に瞳が大きくなる。

「自分だけが繊細で優しくて、みんなが気付かない正義に気付いてる」

足の圧力が強まると声がもれてしまう。


「心の中で他人を見下してるんだろ?」

違う。そう思っても痛みで声に出来ない。

「お前が悩んでることはな。誰もがとっくに一度は考えたことなんだよ。その上でお前が耐えられない不条理や矛盾を飲み込んで生きてんだ」


足が強まる。

「あっ!」

内臓が潰れたと思って声が出てしまった。


「それをお前は何うだうだと自分だけ聖人みたいな顔して。……手を汚したくないだ、そんなの間違ってるだ、何のたまってんだ」

頭の上で枯葉が鳴る。


「嘘、裏切り、犠牲、上等じゃないか。受け入れろよ。それが大人になるってことだ。そういうことを平気で出来る様になって『そんなの絶対許せませんよね。』それぐらい言えるようになれ」


「……すなよ」

か細い声が喉から出た。

「あ?」


彼が訊き返す。

「自分の弱さを大人になるって言葉でごまかすなよ」

そう血がでた口で笑ってやった。


彼はその言葉に一瞬考える顔をした。

私の好きな本当の彼の顔。

だがすぐに先程の眉間に皺を寄せる彼に戻った。


「そんなに死にたがりだったとはな。文字通り黒騎士の踏み台にさせてもらうよ」

そう彼が足に力をかけようとする顔は月の逆光で見えない。

朦朧とした頭だったけど風で森が囁いたのがわかった。

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