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第百二十六話

「矢と毒どちらが早いかな?」

ルシエさんは悔しそうに唇を噛む。

「良いねー。美人の顔が歪むのは」


そう彼は手を叩いて笑う。

「投降しろ」

彼女は両手を上げて降参だという意思表示をした。


私はまた前に出ようとする。

しかしジャンに腕を掴まれる。

なんで? なんでジャン?


三人で戦えば無理な数じゃないはず。

ジャンとルシエさん。それに私。

……私は役に立つかわからないけど。


人任せな自分に気付くとあまり意見を押し通す気になれなかった。

なにか考えがあるのかな?


「牢屋にぶちこんどけ」

そう領主が言うと兵士達が彼女を囲み部屋から連れ出す。

領主はその後なぜか視線をあちこちに飛ばす。


「あったあった」

そう彼はホイップの乗ったデザートを食べだす。

臣下も彼の周りに集まった。


「明日処刑するぞー。広場でな。領民に周知しておけ」

「はっ!」

「例の疫病の治療の一件であいつの名声は無視できないもんになってたからなあ」


そう彼は銀の匙をこつこつと容器にあてて話す。

「やつの名誉を奪っておかなきゃならん。わしの地位を脅かすものは芽から潰す。何か処刑する正当な理由を考えておけ」


あ、まてよと彼はこめかみを押さえる。それからまた口元を歪める。

「こういうのはどうだ。『病気の治療や疫病を防いだのは全てわし近づくため。やつは誘惑の魔法でわしを骨抜きにしてこのレネモを影から操るつもりだったのだ』」


おおっと臣下達から歓声がわく。

「素晴らしい!」

「偉大なる執政者であるケイン様はもちろんそんな奸計にはかからなかったという筋書きですね」


彼は頷く。

「あの美貌だ。真実味があるだろう?」

領主は口を大きく開けて笑う。


「明朝処刑だ! 準備をしておけ!」

そう彼が手で合図を示すと臣下達が声を揃えて一斉に返事をする。

その光景の中で一人。隅にいた灰騎士だけが不敵な笑みを浮かべていた。

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