第百十八話
「あなたはどんな系統の魔法使いなの?」
私は唾を飲み込んだあと半笑いでごまかそうとする。
「女の魔法使いは勘がいいの」
そう彼女は台所で細い煙草をくわえる。
「大丈夫よ。秘密は守ってあげるから」
私は横目でジャンをみる。
眼でもう無駄だから構わんよと言われた気がした。
「そうですね私は……」
そう口を開く。
彼女は二本目の煙草を吸う。
彼女は煙草を吸う姿がすごい似合う。上品な感じさえする。
「ふーん魔法都市ソルセルリーの生まれなんだ。私もそう学院の卒業生」
「そうなんですか!」
身内話にジャンはちょっと退屈そうだった。
「でも劣等生だったなあ」
こんな美貌の女性からは信じられない言葉だった。
私にはとても余裕のある大人に見える。
「こーんな分厚い眼鏡してたしニキビばっかり顔にあったの」
そう彼女は笑う。
「男の子も誰も誘ってくれなかったわ」
私はそうなんですかと頷く。
「特殊系だから尚更肩身も狭くってね。ホント毎日学校が嫌だった」
そう彼女は素敵な笑顔で笑う。
「でもねこのままじゃいけないと思ったの」
「ふむふむ」
ジャンは頑張って欠伸をかみ殺していた。
「駄目でもグズでも自分の出来ることをしなきゃって!」
「うんうんわかりますその気持ち」
ジャンもうんうんと適当に頷いてる。
「だから思い切って髪も切ってね眼鏡も止めたの。服もちょっと勇気を出してお洒落な服を着てみた」
「そしたら世界が変わったんですね! ああ良いなあ。わかるなあ!」
ジャンはもう精神が何処かに行ってしまった様な顔をしていた。
「……私に話をさせてもらってもよろしいでしょうか?」
そう彼が乾いた唇を動かす。
「領主は貴方の薬学の知識の才を高く買っております。先も流行した病から村民を救ったとか。辺境の城ですが貴女の納得する禄で召し抱えたいとのことです」
「お断りしますわ」
そう彼女ははっきりとした口調で言った。
これはジャンが言った通り交渉が難航しそうだ。




