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第十二話
道化師が火花を飛ばして子供たちを笑わせてる。
私は噴水に腰掛けながらその光景を眺める。
拍手喝采の後。その白塗りの男が近づいて来た。
「元気にしてるかカーシャ」
「はい。先輩も御達者みたいで」
そう私は微笑む。
先輩は売店でパンを買ってきてくれた。
「戦争は教国の連戦連勝みたいだな。ウェルトミッド草原でも勝利したってよ」
そう言って私に黒パンを渡す。
「仕事どうですか?」
「疲れるけど楽しいよ。こうおどけた顔で魔法出したりね」
そう彼は変な顔をして火花を出す。
私も笑って見せた。
「カーシャは卒業したらどうするんだ?」
「それで悩んでまして」
彼は納得した様な顔をして頷く。
「妥当なとこで貴族の召使か。金を選ぶなら市の塵屑焼却所か……。魔学院は?」
「魔学院に残れるのは優秀な魔法使いだけですよ」
私は首を横に振った。
そうだったなと彼もパンを齧りながら頷く。
「不自由な身だよなあ」
黙っていたら噴水の音が耳に残った。