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第百十四話

「俺の知ってる伝承とこの本に共通している内容は」

彼は手を交えながら話す。

「嫉妬だ」


嫉妬。

その言葉を胸の中で繰り返してしまう。

彼は続ける。


「黒の魔法使いは一族こそ多かったものの彼らが住んでいた村の住民達からは良い感情を持たれていなかったらしい。選民思想の上に、神秘主義的な考えと徹底的な秘密主義を持った集団だったからだ」


私は唇を触りながら頷く。


「一方で白の魔法使いは妻帯もせず名誉も求めず、ただひたすら民のために治療を続けた人物だったそうだ。長年そんな活動を行っていたため村民の彼への信頼は厚かったと言われている」


「詳しいね」

ちょっと気になって口を挟んでしまった。

「俺は教会の人間なんだぞ。灰騎士は剣の実力だけでなく知識も必要とされるんだ。これぐらいの知識ならクルスだってもってるぞ」


あのクルスさんが……。

信じられない。

みんな意外と頭良いんだな。頭が悪いのは実は私だけ?


私がへこんでるのをよそに彼はつづける。

「黒の魔法使いは白の魔法使いを村のはずれの洞窟に呼び出し焼殺したそうだ」


「理由は?」

「名声を手に入れた弟への嫉妬と一般的には言われているな。他には白魔法の秘密を聞き出そうとして失敗し殺害したとの説もある」


彼は舌が疲れた様子で話す。

「そして人望のあった弟を殺した黒の魔法使いの一族は村人からの反感を買い荒野に追い出されてしまった。その際に創始者が一族にのみ力が使えるよう魔法に仕掛けをしたらしい」


彼は私の瞳を見る。

「……伝承ではお前らがその一族の子孫と言われている」

なるほどねと頷く。


弟殺しの一族か。

カラティーヌの教えの下で迫害するにはもってこいの人間だな。

「まぁ三百年も昔の話だからな。真相は闇の中だ」


彼は話に疲れた様に椅子に背を預ける。

まあ確かにねと私は冷えた飲み物に口をつける。


『お前なら真実にたどりつける』


口に含んだ飲み物を吹き出してしまった。

「うわっ汚いなあ。借りてる本だぞ。何で唐突に咽るんだお前は」

そう言いながらも彼は本の汚れを袖で拭いてくれる。


また声が胸に響いた。

竜の時と同じ。

どうしたんだ私?


彼が本を擦る様に私も不思議に思って自分の胸を掌で擦ってみた。

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