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第百七話
「よし情報は手に入った」
そう彼は革手袋をはめなおす。
小さな村に雪が降る。
私たちは二人隣あって歩く。
「嘘上手だよね」
そう背の高い彼にぼそっと言ってみる。
睫毛を雪がかすめた。
静かすぎて雪の降る音がまで耳に響きそう。
「だから?」
ほんとだよ。
だからなに?
そんなこといちいち気にする私がおかしいんだ。
戦争をしてるんだ。
それぐらいできなくてどうする。
でもなんでだろ。
今まで言われてきた大切な言葉の価値が下がるみたいで嫌なんだ。
ひょっとしたらなんて思わせないでよ。
好きになればなるほど相手に多くを求めてしまう。
戦ってるのに。
こんなこと思うなんて。
心が安定してないなんて言われても仕方ないな。
「お前最近おかしいぞ」
その彼の言葉にかちんときてしまう。
「……誰だよ」
彼が首を傾げる。
「おかしくさせたのは誰だよ」
雪が降る世界が涙でみえづらくなる。
「私をおかしくさせたのは貴方でしょ?」
情緒不安定な私に泣けてきた。
任務中なのにまるで仕事に集中できない。




