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第十一話
窓際に座って夕陽を眺める。
魔法都市の城壁を陽の光がかすめていく。
赤い林檎を齧りながら屋根に足を投げ出す。
「どうしたの感傷に浸って」
そうメニョが隣に座る。
「ちょっと昔を思い出してさ」
メニョの白い肌が夕陽で少し茜色に染まる。
「弟さんのこと?」
「うん。たまに思い出しちゃうんだ」
私は林檎を膝の上に置く。
「生きてたらこんな綺麗な景色も見れたのになって」
「確か病気だったっけ?」
私は頷く。
「きっと栄養が足りなかったんだね。貧乏だったもん」
そう呟くと膝の間にある林檎が目に入った。
「でも知ってる? カラティーヌの教皇は死んだ人を生き返らせられるんだよ」
私は首を横に振った。
「それは嘘だよ」
メニョは食い下がる。
「ホントだよ。神父さん教会で言ってたもん。見た人も大勢いるって」
そう彼女は胸元から銀の首飾りを見せる。彼女の持ち物で一番高価なものだ。
「奇跡を望む人に『奇跡』は起きるんだよ」
「そっかメニョはカラティーヌ教を信じてたんだったね」
私はごめんごめんと謝る。
それからまた林檎を齧った。芯に近づくと少し苦かった。