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第百六話

「おかあさん僕、働きたいんですよ」

そうジャンが腸詰を頬に入れたまま喋る。

料理屋のおばさんは彼に葡萄酒を注ぎながらそうでしょうねと頷く。


「うん。こう見えてもねえぼかぁ腕っぷしだけは自信があるんですよ」

「そうね素晴らしい体格してるものね。どちらからいらっしゃったの」

彼は玉葱をかきこみながら答える。


「ルーベンスです。まぁ、あそこは田舎ですし何せ親父が嫌なやつでね。僕をろばみたいに鞭でぶつんです。いつだか種植えをね。さぼっちまったことがあるんです。一つ入れるところを二つ種を入れましてね。親父が怒ったのなんのって」


よくまあこう嘘がぺらぺら出てくるな。

案外、諜報員の人選は間違ってなかったのかもしれない。

それとも教会の人間はみんな嘘つく訓練でもしてるのかな。


「お連れさんは?」

「うん。こいつは女優になりたいってついてきたんですよ。劇とかサーカスの。ほら作家のゲーネフがいるでしょう。ぜひあいつの劇に出たいって言うんですよ。僕なんかに言わせりゃあいつの作風は好きになれませんがね。新時代の作品だか何だか知りませんが舞台で硫黄を焚きはじめた時は鼻が曲がるかと思いましたよ」


本当に別人みたいに喋るなあと感心してしまう。

「で。ここの領主のケイン様も僕と同じ元々は流れ者でしょ。だから僕にも機会があるかなって。城にはいま雇い口とかないかな? 給仕だって皿洗いだって何だってやるんだけどなあ。今ポケットに十ルブリンしかないんだよ。これじゃあどこにだって行けやしないよ」


彼女は頷く。

「そうなの。今この辺りは男手が不足してるから歓迎されるわ」

「そりゃありがたいね。やっぱ戦争の影響かい?」


おばさんは首を横に振る。

「病気が流行ってたからねー。村にいる魔法使いのおかげで助かった人間もたくさんいたんだけど。治療が不気味でねー。かといってねーあの子も村の嫌われ者だったから仕方ないと言えば仕方ないんだけど」


「へー魔法使いなんて本当にいるんですねー。しかもこんな所に」

そう彼は興味ありそうな瞳でおばさんの眼を見た。

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