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第百五話

「よし最寄りの村に入る前に口裏を合わせておこう」

そう彼が外套の紐を締めながら言う。

「口裏……」


私は石に腰掛けながら暫くその意味を考えてみる。

鳥の鳴き声が聴こえてくるほど静かだった。

「ああ設定ってことですね! どどどういう設定でいきますか旦那様!?」

「おーい下心ぷんぷん出てるぞー」


ったくどうしようもない色狂い魔法使いだな。

静かにひどい言葉を言われる。

「あっそうだ。ジャン。私ねこの旅でちょっと調べたいことあるんだよね」


彼は無言で私を見つめる。

「……魔法のこと」

私はもじもじしながら言う。


「自分が使ってる力のこともっと知りたいんだよね。ほらこれから行く地域ってさ。教国領じゃないでしょ。だからさ真実に近いっていうかさ、他文化から見た魔法の資料や伝承なんかも残ってるかもしれないかなって……」


なんで魔法使いが迫害されてるか知りたい。

今のままじゃ絶対一緒になれない壁があるから。

好きな人と一緒になれない根拠があるなら教えてよ。


知ってもこの気持ちを納得させられるかどうかはわからないけど。


でもきっとジャンは駄目だって言うだろうな。任務中だから。

「駄目だ」

私もようやく人の気持ちが予想できるぐらい人間が出来てきたらしい。


私が寂しそうな顔をしていると彼が口を開く。

「お前が任務に付随して知識を得るのは俺の知ったことじゃないがな」

難しい言葉だけど心は伝わった。


嬉しさで振り返る。

「それを目的にはするなよ。魔法使いだって気付かれた瞬間おわりだからな」


私も微笑んで頷く。

いつもわがまま言って困らせてごめんね。

でも嬉しいって気持ちもある。


きっとわがままを叶えてくれるのが嬉しいんじゃない。

叶えることができなくても一生懸命考えてくれることが嬉しいんだ。

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